編集長から (2021年)
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2021年12月号
岸田新政権が発足して約3か月経ちましたが、未だ高等教育政策の方向が見えてきません。今のところ、大学関係の政策として目立つのは「10兆円規模の大学ファンド」ですが、岸田政権以前から議論され、実施に移されてきたものです。率直に言って、最近の高等教育関係の政策は、文科省が中心となって企画、立案したというより、経済官庁や内閣府の経済政策部門の企画・立案にかかるものが圧倒的に多い印象です。政府は一体ですから、どの省庁が政策を主導しようと構わないとの声もありそうですが、大学や教育に関する政策は、過去の経緯、大学の実態、将来見通しを踏まえた上で一貫性、継続性のあるものにしないと現場は混乱し、実効性が担保されません。そういう意味で、文科省が中心となって政策立案を主導する必要がありますが、文科省幹部と話していると、あきらめにも似た不満を聞くことが多くなりました。問題のある政策の最たるものが、学校法人のガバナンス改革です。この「改革」によって何が良くなるのか、既に法案化が決まっているこの政策に関しては、よほど丁寧な説明をしないと現場が大混乱に陥り、所期の効果があがるどころか、学校法人に膨大なエネルギーを課すだけで何の改革にもならない可能性が大です。財務次官は、財政の責任者としておそらく「クビ」覚悟で政治家に直言しましたが、文科省は果たしてどうか?
2021年11月号
2年近く続いたコロナ禍もようやく収束が見えてきましたので、これまで我慢してきた会食や対面での打ち合わせを再開しましたが、ダブル・ブッキングが続出し、多くの方に迷惑をかけています。時間管理、日程管理が苦手でしたが、これまでは、身近に有能な秘書がいて何とかぼろを出さずに済んできました。しかし、数か月前から完全にフリーになり、ぼろが出ています。
それはともかく、共立メンテナンス(株)、(株)安全サポートと、弊会への法人会員申し込みが相次いでいます。いずれの企業も、大学にとって極めて有益なサービスを提供しており、近々マネ研主催のフォーラムで、両社の事業を紹介したいと考えています。楽しみにしていてください!
2021年10月号
いよいよ9月いっぱいで緊急事態宣言が解除されました。長い、長いトンネルをようやく抜けたという感じです。
それにしても、毎日のようにTVで「専門家」という方々が、人流を減らせ、飲食店で酒を出すな、アクリル板を設置しろ、マスクをしろ、不要不急の外出をするな...とうるさいほど言ってきましたが、この1か月急速に感染者が減ったことについて、我々が納得するような説明ができていません。こうした禁止事項が功を奏したのか、果たして意味があったのか、結局「よくわからない」ということのようです。
最近になって、飲食店でのアクリル板設置は空気が滞留して感染リスクをかえって高める、換気の徹底が一番効果がある、接触することで感染するから握手はだめとか、いすやテーブルはこまめに消毒しろと言っていたのが、これは感染とは関係ないと「専門家」が言っているのを聞いて愕然としました。スーパーコンピューターで飛沫の状況をシミュレーションして見せて、アクリル板を設置しろと言っていたのはいったい何だったのかと思います。ともあれ、読者の皆様のご健康をお祈りします。
2021年9月号
今年の夏は、7月の酷暑、一転した8月の長雨、オリンピック・パラリンピックの開催と目まぐるしく変転し、一方でコロナ禍も猛威を振るい、あわただしく過ぎていった印象です。国立競技場に近い都心に住んでいる関係で、オリンピック開催中は、交通渋滞や首都高速の通行料追加(ロード・プライシングとか言うらしい)、さらにはテニス・クラブもオリンピック開催中は資材置き場になるとかで(クラブは国立競技場に近い)6 ~ 9月の間閉鎖と大いに迷惑をこうむりました。
緊急事態宣言が休みなく発令されている首都居住のため、会食や会合もままならず、県域を越えての移動もしにくく、そろそろ限界を迎えようとしています。読者の皆様の地域ではいかがでしょうか。あと数か月でワクチン接種も進み、治療薬も承認されて、こうした異常事態も徐々に解消に向かうと期待しています。それまで、皆さんも気を付けてお過ごしください!
2021年8月号
「国立大学」と一口に言っても、極めて多様です。学生数数百人の小規模大学もあれば、3万人近い学生を擁し、100人以上の教員のいる大規模研究所や総合病院を持つ大規模大学、さらには大学院大学など本当に様々です。その中で一般的に地方国立大学と総称される大学群は、人口減少や地方経済の疲弊の中で既に危機的な状況に陥っています。私立大学のように、学生が集まらず、財政危機に陥って破綻、学生募集停止という悲惨な状況に陥ることは直ちにはありませんが、はるか地平線のかなたに暗雲が湧きおこっているのが見えるという状況です。学生募集に苦戦したり、入学者の基礎学力不足に苦慮している大学も少なくありません。ここから抜け出すためには、「地方」にあるというハンディを乗り越えて、ここで学びたい、ここでしかない学びができる大学教育を再創造するとともに、優秀な教員を惹きつけるだけの魅力的な研究環境、給与・待遇を用意し、自治体と協力して暮らしやすく、文化的にも満足のいく生活環境を用意する必要があります。そうした魅力的な大学づくりは、人事権、財政権を持つ学長の先見性、ビジョン構築力と実行力、突破力が必要になります。そしてそうした学長を支える理事、事務局幹部の人選が決定的に重要です。
2021年7月号
今月号は、大学のダイバーシティ経営を特集しました。ICT技術と国際航空の爆発的な普及を背景として、様々な歴史、宗教、言語、思考法・発想法を持つ多様な人々が否応なく緊密に結びつくようになっており、これからの社会を生きていく若者たちに、そうした多様な世界の実相を肌感覚、体感覚で実感させていく経験を積ませることが極めて重要です。にもかかわらず、大半の若者たちは、実社会に出ていくまで、極めて同質的な社会で暮らし、学んでいきます。特に感受性の高い20歳前後に外国人の友人を持ち、海外に出て見聞を広め、実社会で活躍する大人と触れ合うことの意義、重要性は論を俟ちません。にもかかわ
らず、同世代人口の半数以上が、この大切な時期に数年間を過ごす大学の現状は、多様性をほとんど欠いた同質的な世界と言わざるを得ません。外国人の教員も学生と触れ合うこともなく、政府が指定した『スーパーグローバル』大学にしても1年以上の長期の正規留学生の数はインバウンドはともかくアウトバウンドに関しては全く物足りない状況です。そうした大学を運営するのも、高年齢の男性、日本人ばかりで、お互いに刺激に乏しく、思い切った革新、改革に及び腰です。そうした中で、今回は、大学のダイバーシティ経営について考えてみました。
2021年6月号
2003年、京都大学において、法人化後の意思決定システムや学長選考の仕組みなどを議論している際、関係WG座長の法学部教授が、「選考対象者は、京大の現職の教員か、かって教員であったものに限る」との提案をしました。筆者は、「世界の京大を標榜する大学が、そんなことでいいんですか。学外者でも外国人でも京大のトップに就ける仕組みを作るのが当たり前でしょう」と反論しました。すると、件の座長は、「大学の最大のステークホルダーである教員の支持なくして大学運営はできない」と言ったものです。結局、筆者の主張が通って、京大以外の教員でもいいということになりましたが、ここで気になるのが「最大のステークホルダーは教員」という認識です。文科省が、最近になって、「最大のステークホルダーは学生」と言い始めました。マネ研の3月の総会では、学生中心の大学づくりを進めている英国の例を、政策研究大学院大学の林先生に紹介していただきましたが、わが国の大学がその方向で変わっていくことを期待したいものです。
2021年5月号
全ての人が、コロナ禍によって、ライフ・スタイル全般の変化を余儀なくされています。僕も体を動かす機会がぐんと減りましたし、月に2,3回行っていた音楽会も中止が相次いでいます。年に数回家族と出かけていた海外旅行も断念、国内旅行も東京近郊に限られます。残念ですが、逆にこういう状況だからこそ、新たな発見や楽しみもあります。これまであまり機会のなかった近場への小さな旅がその一つです。片道1時間弱で行ける日の出町には、美しい自然、鄙びた里山の村の佇まい、そして天然温泉があります。箱根は、東京から車で90分という地の利が良く、ガラスの森美術館、ポーラ美術館など見所もたくさんあり、もちろん、至る所にある温泉も最高です。最近、昔ながらの旅館にある白濁温泉を見つけました。露天風呂で、たっぷり1時間、湯につかった後、寝転んで風に吹かれるを交互に繰り返すのが、僕の今の最高の過ごし方です。
2021年4月号
3月27日、本会の理事会、総会、記念講演を行いました。総会には、オンラインと対面で64名の参加がありました。2021年度の事業計画、予算とともに、この3月末で任期満了を迎えた理事3名の退任と新たに4名を理事に選任しました。現在参与を務めている西阪昇氏、藤原喜仁氏に加え、編集委員の日野智仁氏、それに筑波大学の池田一郎氏です。また、不肖本間と、上杉、横田両副会長も再任されました。新任理事の方々には、本会の諸活動の推進のために尽力を期待しています。また、本会の正会員(個人会員)は前年度17名減の363名にとどまっていますが、月刊誌の購読会員は大学・団体174冊、企業31冊と前年度比5冊増、また企業・大学など法人会員は58と前年度同数となっています。今後、会員、読者の協力を得て、さらに活動の幅が広がることを期待しています。
2021年3月号
コロナ禍も、ワクチン接種が始まり、人々の協力もあって、ようやくかすかな光が見えてきたように思います。
本会でも、3月26日(金)に予定している「改革指向型職員研修」、27日(土)の理事会、編集委員会、総会もリアルとオンラインを併用して開催することとしています。昨年度見送りを余儀なくされた海外大学調査は、海外諸国の事情もあり、容易に先を見通すことができませんが、政策フォーラムやマネ研サロンなどは、着実に実施していきたいと考えています。2021年度の事業、予算計画は27日の総会に提案し、承認される予定です。
また、3月末で現役員の任期が到来しますので、一部の方々の交代を提案することにしています。退任される理事には、これまでの貢献に対し心から感謝を申し上げ、新任の理事には大いに期待したいと思います。
2021年2月号
コロナ禍は、依然として収束の兆しは見えませんが、ワクチン接種の実施が視野に入り始めており、少しづつ前途に希望が見え始めた感じがします。
今月号は1月号に続いて2021年の高等教育政策の展望についての特集を組みました。前月号では、弊会副会長の上杉氏から時代の転換点にある現代の大学の変容と目指すべき姿について、財務省の神田氏からは、わが国の今後の経済、財政のみならず、科学技術の進展、グローバル化など急速な社会変容の中で、わが国の大学がどうあるべきか熱のこもった論考をいただきました。
今月号は、その続きであり、年の初めに当たって、視野を大きく広げ、日々自らの所属する大学、企業等で何をなすべきか考えてみるのも無駄ではないでしょう。
2021年1月号
コロナ禍は、収束の気配どころか、感染爆発の様相を見せていますが、読者の皆様は日々いかがお過ごしでしょうか。大学関係者の方は、近づく入試、新年度の学事歴、学生に対するケアや経済支援、国際交流の在り方の模索など、多忙な日々を送っておられるのではないかと思います。
そうした中でも、政府、文科省、財務省そして与党などが着々と大学にとって一層厳しい政策をとりつつあります。多くの大学は、これ以上の大学に対する改革圧力をやめ、大学に対する財政的支援を増やすべきだと漠然と考えているかもしれませんが、社会・経済界にわだかまる大学に対する不信、不安は一向に払拭くされず、そうしたことを背景にさらに強い改革圧力が加えられるものと思います。これを「圧力」と考えていればすべて受け身の対応になります。逆に、自身の意思で改革を前向きに進めていれば、政府が何を言って来ようと「圧力」ではなく、「支援」「後押し」になります。
本会は、2005年の創立から16年ですが、ささやかながら、引き続き、大学の経営改革、教学改革を推進する役割を担っていきたいと決意を新たにしています。