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編集長から (2022年)

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2022年12月号
 今月号は「大学と学生エンゲージメント」が特集です。12月号では、日本の大学の学生エンゲージメントの取組み事例を掲載させていただきました。いずれの大学も日本では、一歩先に進んでいる取組みであり、厳しい日程のなかをご執筆いただいた先生方に感謝申し上げます。
 本テーマを企画する際に、4年前に訪問調査をした英国のラフバラ大学を思い出しました。ラフバラ大学をはじめ英国の大学では、学生の理事枠や学生ユニオンがあるなど、学生エンゲージメントが先行しています。ちょうど英国では、コロナ自粛は解除され、日本でも規制が緩和されたこと、コロナの第8波が懸念され始めたことも相俟って、その合間を縫うように急遽、英国大学の学生エンゲージメントを中心に調査を実施しました。滞在期間の都合で、ロンドンの北部の3つの大学となりましたが、ヨーク大学、ハル大学、ダラム大学の執行部の方々より貴重なインタビューをしてきましたので、でき得る限りその内容を会員の方々と共有したいと考えております。
 さて、2022年も間もなく終わります。今年は、ロシアのウクライナ侵攻があり、それに対する制裁がブーメランのように我が国を含めた西側諸国に物価高騰、エネルギー不足になって跳ね返っています。来年もどういう年になるか予断を許しませんが、本誌の読者にとって良い1年あることを祈っています。

2022年11月号
 11月6日から10日まで、英国の3大学を実地に訪問して、学長、副学長や事務局長、国際交流部長など大学運営に責任を持つ人たちと意見交換してきました。参加者は、僕の他、理事の和氣さん、編集委員の大森さん、理事で現地参加の田中さん、それに事務局の矢島さんの5名です。マネ研としては、実に7回目、コロナ禍を挟んで4年ぶりの海外大学訪問調査です。訪問したのは、中部のYORK、HULL、DURHAMの3大学で、調査項目は、大学発展戦略の形成プロセスと学長など執行部の役割、英国政府が近年標榜する「学生中心の大学づくり」の実情、特にStudent Unionの果たす役割、それに最近の政府の高等教育政策の受け止めなどに絞りました。また、大学訪問に先立ち、元ブリティッシュ・カウンシルの日本副代表で現在民間企業や大学で新たに責任ある地位に就いた幹部に『コーチング』を行っているLesley Hayman氏に1時間にわたってインタビューを行いました。訪問調査の結果は、改めて本誌で紹介することにしますが、1点だけ特に印象に残ったことを紹介すると、DURHAM大学の「カレッジ及び学生経験」担当副学長が語った、学生の人間的成長をクラスルーム以外の様々な活動、とりわけ『カレッジ(学びの寮とも言うべき集団住居ですが、仮想現実でもありうる)』をベースにした様々な活動の重要性です。

2022年10月号
 コロナ禍も収束が見えてきました。街を歩くと依然として、ほとんどの人がマスクをしていますが、こんな風景も間もなく過去のものとなるでしょう。入国時のPCR検査や待期期間もようやくなくなりました。こうした状況を受けて、留学生の派遣、受け入れや、教員の国際交流活動もようやく旧に復そうとしています。本会でも、2018年夏の英仏大学訪問調査以来、4年ぶりとなる海外大学訪問調査を11月に行う予定です。今回は、本会理事で英国在住の田中梓氏と元ブリティッシュ・カウンシル日本代表のLesley Heyman氏の協力を得て、地方に立地する特色ある3大学、East Anglia、Hull、Durhamを訪問し、大学の発展戦略、学生の大学運営参加の状況、英国政府が力を入れているという「学生中心の大学づくり」の実際を見てくる計画です。本号は、コロナ禍の収束を踏まえた国際交流の特集です。筆者は、早くから、若者が早い時期から海外に出て、自らを鍛えることの重要性を訴えてきましたが、我が家でも実践してきました。今回、我が家の二人の子供(と言っても30代ですが)の国際体験を紹介させていただきます。

2022年9月号
 コロナと社会経済活動の両立を目指した動きが、ようやく活発になってきました。コロナウイルスの分子構造なども解明され、ワクチンが開発される一方、治療薬も続々と生まれています。当初、感染防止策として、3密回避、換気などが強調され、飲食店での酒類停止、8時営業停止、アクリル板設置、テーブルやドア・ノブの定期消毒などの措置が取られました。営業時間の制限は、イタリアンの『ラ・ボエーム』などを展開するグローバル・ダイニング社が、こうした制限は憲法違反と訴え、勝訴しましたので、さすがに飲食店に対する制限はなくなりましたが、未だに会話はするな、飲食時以外はマスク着用を求め、アクリル板もそのままの店が圧倒的多数です。街中を歩いても、酷暑の下でさえ、そしてほとんど人通りのない週末早朝でもマスクをしている人が大半です。今頃になって、政府が税金を使って、『こんな時は、マスクはしなくてもいい』と政府広報を行う始末です。こうした状況から見えてくるのは、大勢順応主義、人がするから自分もするということなかれ主義、和を乱したくないという協調主義です。どこか、大学改革に対する、関係者の態度と似ているような気も....。

2022年8月号
 8月号は、『学長、理事長在任時を振り返って』という特集です。国公立大学であれ、私立大学であれ、理事長、学長のリーダーシップは極めて重要です。大学の将来の発展、衰退を決定づけると言っても言い過ぎではないと思います。誰もが、理事長、学長になった時は、夢、希望、ビジョンを描き、それを実現すべく、戦略や計画を立て、教職員と話し合って最大限の努力をすることは間違いがありません。そうした努力を続けてもなお、こうすればよかった、あの時あれをすればよかったと後悔、反省の念に捉われるものです。筆者は、西日本の地方都市の小規模な学校法人、大学の立て直しを託され、「非常勤」の範囲で最大限の努力を行いましたが、批判、抵抗、サボタージュ、反対、ムシ、中傷に遭い、自らの非力やコミュニケーション不足でできなかったこと、積み残しの課題も数々あります。こうした、理事長、学長の「振り返り」の結果をこれから大学のトップリーダーに就く人だけでなく、彼らを支える多くの教職員の方に熟読していただきたいと思います。

2022年7月号
 今月号は、学校法人のガバナンスです。理事会、評議員会の権限と責任、監事の権限と責任、中期計画、情報公開など様々な仕組みを通じて、私立学校を設置運営する学校法人の適正・適切な運営を担保しようという試みとして、今次ガバナンス改革がある訳ですが、その行方は迷走を繰り返し、今後の方向性は混沌としています。一度、学校法人の運営、組織マネジメントの原点に返って、あるべき姿を考えようというのが、今回の特集の趣旨です。
 ところで、今年も暑い夏がやってきました。6月の猛暑、超短期の梅雨、時ならぬ集中豪雨、山林火災などが地球温暖化の影響であることは疑いがありませんが、一方でこれらの自然災害に即効性のある対応策はありませんから、この世界で暮らす我々は、一人一人、耐えることのできるものは耐え、災害には備えを怠らず、生活を守るしかありません。それでも、家族や友人との時間を大切にし、時には見知らぬ土地に旅に出て、来し方行く末に思いを馳せ、気力・体力・意欲を新たにする必要があります。読者の皆様が楽しくも充実した夏休みを送られることを祈っています。

2022年6月号
 今月号は「大学のダイバーシティ経営」について特集しました。最新の統計によれば、我が国の大学教員総数190,448人のうち外国人は9,526人と5%に過ぎず、学長となると677人中わずか11人、副学長も1,373人中27人に留まっています。女性の学長は103人を数えますが、女性で外国人となるとゼロ人です。タイムズの世界大学ランキングで世界第1位の英国のオックスフォード大学、第11位のインペリアル・カレッジ、第27位のLSE、第51位のマンチェスター大学の学長がすべて女性であることと際立った対照を見せています。我が国の自他ともにナンバー 1、2と認める東大や京大で女性学長が誕生することはあるのでしょうか、あるいはLSEのように外国人が学長になることは考えられるでしょうか?ロシア・ウクライナ戦争の影響で、フィンランド、スウェーデンの首相が頻繁にTVに登場し、コロナ禍では、ニュージーランドの首相が注目されましたが、いずれも女性、しかもフィンランド、NZの首相はまだ30代の若さです。我が国の大学、政治、行政、企業において、ゆるがぬ中高年男性の支配が、我が国の経済の低迷、大学グローバル化の著しい立ち遅れ、後を絶たない政治家・官僚のパワハラ・セクハラとどこかでつながっているように思えます。

2022年5月号
 「学校法人のガバナンス改革」は、迷走に迷走を重ねた挙句、文部科学省は、今通常国会への法案提出を見合わせたと報じられています。
 昨年、1昨年の閣議決定では、評議員会の権限強化を柱とする学校法人改革案を昨年末までに取りまとめ、今通常国会へ提出、成立を期すとしていましたので、今回の法案提出見合わせは、閣議決定違反であり、極めて異例です。私学関係者への根回し、説明が不十分であったことは否定しようがありませんが、それにしても、現状変更に対する私学関係者の反発、反対は異常なほどでした。私学団体などは、改革反対の理由の大きな一つとして、大学のことを十分理解しない学外者が中心の評議員会に権限を持たせることになると、学生中心の大学にならない、としていましたが、そこまで言うなら、大学の現状が「学生中心」になっているかどうか真摯に見直す必要があります。その一例として、文科省が行っている学生の声を聞く「全国学生調査」に全私立大学が参加すべきではないでしょうか。法案が後退したことで「こと終われり」と考えている私学関係者がいたとすれば、私学に対する国民の信頼、支持も後退して行くことになります。

2022年4月号
 コロナ感染者数がなかなか減りません。その背景の一つとして、若者のワクチン接種率がなかなか上がらないことが挙げられています。また、感染しても無症状者が多く、その人たちが感染者を増やしているのではないかとも指摘されています。専門家は、今発表されている感染者数は氷山の一角ではないかとも言っています。なんだかおかしいと思うのですが、無症状者が多いということは、感染しても発病しないということですから、何ら問題はないのではないでしょうか。いずれにしても、大学は、ポストコロナ時代を見通して、これまでの教育研究の在り方や業務運営の仕方、働き方などを抜本的に見直していく必要があると思います。(本間)
 今月号では、「法人・大学の意思決定の効率化と迅速化に向けての展望」をテーマに先生方に書いていただきました。私立大学中心になってしまいましたが、私立大学では、折しも学校法人制度改革特別委員会により3月29日に私大のガバナンス改革の報告書がだされました。報道によるとこの提言による私学法改正によって、理事長、理事会へのチェック機能が強化されるとのこと。勿論は非常に大事ですが、意思決定の迅速化の面ではどうなるのか、弁護士の大河原先生に執筆いただいた次第です。

2022年3月号
 学校法人のガバナンス改革が、迷走を続けています。最終的な決着は今月末のようですが、いずれにしても、昨年12月に学校法人ガバナンス会議の報告が提案した評議員会の最高監督・決議機関への転換は、大幅後退を余儀なくされるでしょう。今回の『迷走』は、文科省が最大の政策目標にしていた高大接続改革の撤回と並んで、文科省の大きな失点になると思われます。ただ、今回のガバナンス改革は、文科省が主体的にリードしたものではなく、それどころか反対だった、少なくとも、事前に関係者の理解を得て、段階的に実施するつもりであったはずです。それが、政府全体の公益法人改革、企業の統治改革の一体的推進の旗印のもとに、有無を言わせず実施を強いられたものと思われます。その意味では、専門職大学制度の創設、国立大学運営費交付金における実績評価に基づく傾斜配分の増額(1,000億円)、10兆円ファンド創設に伴う国立大学のガバナンス改革などと同様、文科省の政策の流れとは別の『流れ』によって文科省の政策が翻弄されているように見えます。文科省はよほど性根を据えて主体的な高等教育改革のビジョンを確立しないとその存在意義が疑われるところに来ていると思います。

2022年2月号
 今月号は、量的に増加の一途をたどり、質的に高度化・多様化する一方の大学業務の効率化、最適化、そして教職員の自立的成長と学生の「新たな学力」の獲得を支援するコクー社とフライヤー社の最新の大学向けサービスを紹介します。これは、昨年12月にオンライン形式で開催したセミナーの再録ですが、さらに大学関係者の便宜を図るために当日発表資料に加筆しています。読者の参考になれば幸いです。
 ところで、僕は、日本経済新聞の[私の履歴書]を愛読していますが、そこに登場する人たちが異口同音に口にするのが、若き日の恩師、友人との出会いが、彼らのその後の生き方、人生、進路に迷った時の判断に大きな影響があったことです。我が国では長い間、大家族で暮らすことが当たり前で、家によっては叔父、叔母、従兄弟、従姉妹と同居し、あるいは近所に住んでおり、そうした暮らしから自然に様々なことを学んでいたはずです。現代日本では、こうした自然な形で人間関係を学んだり、文化や伝統を受け継ぐ機会が失われました。最近報道される、無辜の他人を巻き込む悲惨な事件が起きる度に、こうした事件を起こす人たちの背景に、こうした共同生活の崩壊が関係しているように思えて仕方がありません。その意味で、青春時代のある時期、異年齢で異なる背景を持つ人たちと生活や活動を共にする寮の魅力がもっと見直されてもいいと思います。来月号は、そういう寮の魅力を特集します。

2022年1月号
 会員の皆様、2022年新年あけましておめでとうございます!新たなオミクロン株の登場によって、新型コロナウイルス感染症が急拡大し、いよいよ恐れていた第6波が現実のものになりました。高等教育、大学の世界も、今年は、学校法人ガバナンス改革、大学10兆円ファンドと『国際卓越大学』創設に伴うガバナンス改革、コロナ禍対応、教学マネジメント、リスキリング・・・と多くの困難な課題がありますが、岸田総理も言うように、大学は、イノベーションと人材養成の拠点であり、我々大学人の奮起が求められています。本誌も、今年は創刊200号という記念すべき節目を迎えますので、これまでにもまして、大学改革、高等教育政策の転換に向けて、本音ベースの情報発信を続けていきますので、引き続きよろしくお願いします。

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